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現在開催中のノンバーバル・パフォーマンス『ギア』
キャストに聞く、『ギア』の過去、未来、現在③!

@ぴあ関西での『ギア』スペシャルインタビュー第3弾は、マイムのいいむろなおきさんと、ブレイクダンスのNARUMIさんにご登場いただきます! それぞれのジャンルから観た『ギア』とは、そして『ギア』を通じて目指すものとは?などなど、さまざまな視点で語っていただきました。現在、大阪・住之江の名村造船所跡地でトライアウト公演を開催中。ぜひ、ご一読いただき、足をお運びください。もちろん、既に観劇された方からすると「ああ、なるほど!」と『ギア』でのシーンが目の前によみがえってくるはずです!

―― @ぴあ関西です。今日はよろしくお願いいたします。『ギア』長期トライアウト公演の前に'10年1月と12月に大阪で、そして今年の1月から長崎・ハウステンボスでの公演がありましたが、それぞれの公演を経て生じた変化などを教えてもらえますか?

NARUMI「'10年1月公演(以下、1月公演)のときには初めての顔合わせで。こういう、ジャンルの違うパフォーマーがひとりずつ参加してやるっていうのは初めてで、最初はいろんなことを試したりして、作っては没、作っては没、作っては生きとかでやってたんですけど、1月公演の時点ではみんな、感触とかも掴めてなかったと思うんです。それで、いろんな意見を取り入れて'10年12月公演(以下、12月公演)に生かしたんですけど、それぞれジャンルにとっての課題とかありましたね。特にブレイクダンスは普段、ものすごく広いところで伸び伸び動く方が多いんですよ。でも、『ギア』には場所の制限があって、そういう問題とかもいろいろ解消していって。個人的には、やっと今、ソロとしてすごくパフォーマンスがやりやすくなってきてますね。そういう手応えは掴んでいます」。

―― ブレイクダンスは広いところでやるのが基本なんですか?

NARUMI「そうなんですよ。ブレイクダンスって、舞台上やフロアーで人が円になって囲って、そこでバトルを繰り広げる、そういうことがメインのジャンルなんですよ。ストリートダンスの中でもバトルっていうのがメインなんで、ある程度の広さを必要とするダンスなんです。もちろん、バトルですから、相手もいる」

―― それが『ギア』では、ひとりでブレイクダンスを見せるという形になって。

NARUMI「『ギア』独特の小道具であったり、場所であったりっていうのを使った上でブレイクダンスのいいところを見せるということに、始めは正直、苦戦したんですけど、少しずつ慣れたというのもあるし、自分のいい見せ方もしっかり把握できるようになってきましたね。多分それは全パートでも言えると思います」

―― 見せ方が把握できるようになったというのは、いつごろですか?

NARUMI「12月公演の時点でいろいろ作り変えたんですけど、まだよくなるなと思って。長崎公演はまた舞台のセットが全然違ったんで、別なんですけども。でも、長崎で毎日、公演したことによって、例えばお客さんの数が少なくても楽しんでもらえる、自分も楽しんでやるっていうこととか、いろんなお客さんの前でパフォーマンスができたんで、自分の精神的な面もすごいアップしましたね」

―― では、『ギア』のブレイクダンスと普段のブレイクダンスの共通点と相違点を教えてください。

NARUMI「共通点はやっぱり、お客さんにどれだけ感動を与えられるかとか、周りの気持ちを動かすとか、巻き込むとか、そういう点では同じだと思いますね」

―― 違いは?

NARUMI「違いは、やっぱりストーリー。今回はお人形さんをメインにして、4人のパフォーマーが動いていくんですけど、そういうストーリーの流れからいきなり、パフォーマンスだけが取ってつけたようになったらやっぱり、よくわからなくなるし、パフォーマンスを見せたいのか、ストーリーを見せたいのかわからなくなるので、自分の気持ちも動かしながらパートを見せるっていうところ。それと、『ギア』での床は動くんですけど、動くものの上で踊るなんてことはないんですよ、普段。机の上とか、そういうセットを使って動くところでのブレイクダンスって『ギア』でしか見られないものですね」

―― なるほど。では、『ギア』に参加してみて、ブレイクダンスに還元されたことはありますか?

NARUMI「正直始めは、キツぅって思ったんですよ。踊るところは狭いし、倒立でフリーズするときも、机がちょっと安定してなくて恐怖感もありましたしね。落ちたときのこととか考えて。それで、ちょっと厳しいなって思ってたんですけど、いろいろ試してみて、そういう技だけじゃなくて、音楽にしっかり乗せて踊ること。ダンスなんで。そういうことを考えたら、自分のパフォーマンスの幅が広がりました。普段とは違うところからヒントを得て考えたりとか、条件が変わっても『無理、無理』って思うんじゃなくて、条件が変わった上でいかに自分の新しい見せ方ができるかっていうことに前向きに挑戦できて、それはすごい、『ギア』以外の踊りの面で考え方として成長できました」

―― では、演じるということはどうですか?

NARUMI「いやもう、始めはすっごい難しかったです。芝居をほとんど経験したことがなかったんで、本当によくわからなかったんですよ。で、前回、12月公演のときは、いいむろさんとか、ヒロインの兵頭祐香ちゃんに個人的には引っ張って行ってもらって、少しずつ面白いなって思えるようになってきて。今も勉強中なんですけど、ノンバーバルなんでまあ、話せないので。多分、台詞があっても下手やと思うんですけどね(笑)」

いいむろなおき(以下、いいむろ)「下手やろ(笑)」

―― ここでいいむろさんご登場です。

NARUMI「あったらあったで棒読みになると思うんですけど(笑)」

いいむろ「100パー、そうなる(笑)」

NARUMI「表情とか間とかを使って人に物事を伝えることがすごい難しくて。今、ほんま、少しずつわかってきた感じです。でも全然、まだまだ、これから伸びしろがあると思います! ワハハハハ!」

いいむろ「わ~……、それ、自分で言うたか~!」

NARUMI「ハハハ!」

―― では、いいむろさんにもお伺いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。いいむろさんはマイムでご参加されていまして、昨年1月と12月の大阪での公演、そして今年1月の長崎で公演されて、回を重ねて進化したことを教えてもらえますか?

いいむろ「段取りとかで、稽古中の言葉で伝わっている部分があるんですけど、やっぱり回数を重ねることでそれが半ば、超能力的というか、空気を読むという感じで伝わることがあるんですよね。言葉では表せないところでの息の合い方っていうのが。とても合ってきたと思います。今回はダブルキャスト、トリプルキャストなんで、それを次の人に伝えるときに、『とりあえず、舞台に立ってみたらわかるよ』みたいな、そういうところっていうのがチームとして、ひとつの団結力として、出てきたな~って、回数をやることで感じましたね」

―― その伝わり方についてもう少し詳しく教えてください。

いいむろ「多分、具体的には何かあると思うんですよ。呼吸であるとか、動きに対する敏感さであるとか。そういうものがどんどん研ぎ澄まされていくのが、何か実感としてすごくあって。4回とか5回しかやったことがない時期には全然、気づかなかったことが、10回以上繰り返すことによって明らかに違いを感じることもありますし、それが本当の意味でブラッシュアップ、磨き上げていく作業だったんだなって感じます」

NARUMI「さすが!(笑)」

いいむろ「何がやねん(笑)」

―― なるほど。では、普段の舞台と『ギア』でのマイムの違いってありますか? 何となくそこまで大きな違いはないんじゃないかって私は思ったりするんですが…。

いいむろ「僕も普段、集団で舞台をやったりするときとか言葉を使わないので、そのあたりは同じなんですけど、やっぱり異ジャンルの方たちが集まってるんで、何ていうか、その人たちの見せ場であったりとか、力を入れているところ、逆に力を抜いているところ、そういうのがあるんですね。それによって僕も演じ方を変えてますし、『この人のここを立てなくちゃいけないな』とか、『ここがこのパートのいいところだな』とか、ジャンル内でもあるんですね。同じブレイクダンスでも、NARUMIちゃんのいいところ、kakuちゃんのいいところ、HIDEくんのいいところ、それぞれあるんですよ。そういうところに合わせて、自分が柔軟にやらなくちゃいけない。でもそうやってやることがまた楽しいっていうのが『ギア』独特の部分だなって思いますね。独特の楽しみ方であり、僕も出ていて楽しいです」

―― では、客観的に見て、『ギア』の面白さ、魅力について教えてもらえますか。

いいむろ「どうなの?(笑)」

NARUMI「やっぱり、パフォーマーがバラバラでありながらも、ひとつの空気を作って見せていくところが一番面白いところやと思うんですよ。さっきいいむろさんが言わはったように、回数を重ねてそれがほんまにわかってきたし、初めはどっちかって言うと、私とかは『ああ、もう、足引っ張らんとこ』みたいな感じで、『勉強!勉強!』って思いながらやってんたですけど、キャストも増えたらいつまでも『勉強!勉強!』って言うてられへんっていうのもあるじゃないですか。そやし、学ぶことと伝えること、そういうことも回数重ねてわかってきたんで今は面白いですね。あとは、個別のパフォーマーのキャラクターであったりとか」

いいむろ「僕もそう思いますね。関西的な言い方だと、『お得感』がめちゃめちゃあるんですよ」

NARUMI「うん」

いいむろ「ここにきたら、マイムは観れるし、ブレイクダンスは観れるし、バトンも観れるし。それぞれ、ものすごいレベルの人たちが集まっているんで。本物が集まっている。単にショーケースを見せるんじゃなくて、ひとつのストーリーとして、ちゃんとヒロインの女の子を中心に回っている。で、マジックも……あ、マジック言うの忘れてた(笑)」

NARUMI「(新子)景視、怒りますよ(笑)」

いいむろ「景視、怒るわ(笑)。『ギア』は舞台やし、演劇だと思うんですけど、ひとつのアトラクションに自分自身が巻き込まれるような感じで、全方向で楽しめるものだなってお客さんには感じてもらえるんじゃないかと思いますね」

―― なるほど。一番最初に『ギア』のお話をお聞きになったとき、どういうご感想をもたれましたか?

NARUMI「やってみたい!って思いました、私は。もともと舞台とかやってみたかったんですけど、ブレイクダンスはストリートダンスの中でも特殊なんで、あんまりコラボレーションする機会がないんですね。興味があっても自分から動かんとそういうお仕事ももらえないジャンルなんで。だから、すごいやってみたい!って思いました。今まで経験しなかったことをしてみたいし、新境地みたいなところに自分から足を入れて、そこからいろんなことを吸収したいと思ったし、今までストリートダンスの世界で培ってきた経験や実力が、その世界を出たときにどこまで通用するのも見てみたかったですし。いろんな人と関わって、いろんな面白さを味わってみたかったという思いもあったので、すごいノリノリでしたね」

いいむろ「そうですね。ブレイクダンス、バトン、マイム、マジックっていう世界って、よく知っている人は知っている。けど、いつも同じ世界に留まってしまうところが、どうしてもそういう傾向があると思うんです。僕も普通のお芝居にかかわったりとか、いろんなところに出て行こうとしている中で、やっぱり『ギア』はその裾野が広がっている感じなんですね。他のパフォーマンスの人と仲良くなりたかったっていう単純な興味もありますし、たくさんの人にこのマイムっていうジャンルを知ってもらいたいなっていう思いでも参加させてもらってますね」

―― その異ジャンルの方とお顔合わせして、実際に共演されてみて、発見はありましたか?

いいむろ「……最初は掴み合いの取っ組み合いやんな(笑)」

NARUMI「(笑)我が我がですよ」

いいむろ「いやでも、最初はほんと、噛み合わなかったよね。“ギア”が噛み合わねぇな~って」

NARUMI「最初は全員がそう思ったと思うんですよ。集められたときも『ホンマにできんのかな? どう作っていくのかな』って。しかもこの舞台って、私たちは言われたことやるだけじゃなくて、稽古中に自分たちでいろんな意見を出し合って行くんですよ」

いいむろ「キャストもクリエーションしていくっていう。もちろんお客さんからいただいたアンケートとかも元にクリエーションしていくんですが、『この台本でお願いします』っていう形じゃないんですよ。だからもう、最初は何のこっちゃですよ。お互いに『この人、何ができるんやろ』って探り合うような」

NARUMI「そうそうそう。マイムも聞いたことある、マジック、バトンも聞いたことあるけど、具体的に何をしはるかは全然知らなかったんで、私は。『あ、こういうことをしてはるんや』っていうところから入ったんで」

いいむろ「小さなワークショップを開いたりして、お互いに体験してみて、理解を深めるようなことをして徐々に噛み合っていったような部分がありますね」

―― そうやってどんどん噛み合う感じとか、気持ちよさそうですね。

いいむろ「そうですね。でも全然、相容れないところは相容れないですよ(笑)」

NARUMI「ハハハ!」

いいむろ「ジャンルとしてね、それはありますね。ここはブレイクダンスだから集中して見せるというふうに、完全にそのパートだけ音響さんとやり取りして立たせる部分とかもあったり。あと、それぞれの『意地』もあるしね」

NARUMI「そう。私は、最初はそういう気持ちはあんまりなかったんですよ。どんだけついていけるかとか、どんだけしっかりできるかってことに重点を置いていて。でも今は、5つのジャンルの中で一番、印象に残らなイヤなんです!(笑)。それは、パフォーマーとして私に一番おいしい思いをさせろっていう意味じゃなくて、自分にブレイクダンスっていう与えられたパートがあって--それは全員あるんですけど、ブレイクダンスよりもわかりやすく、お客さんが『ああ!』ってなるジャンルがある中で、いかに私が人の心を動かせるかっていう」

いいむろ「それ多分、みんな感じてるでしょうね」

NARUMI「そうそうそう。それをしないと、『ギア』のひとつの魅力であるパフォーマンスの部分がパワーアップしないし、やっぱり自分も今のまま、現状維持じゃなくて、もっとよく見せよう!みたいな、いい刺激になってますね」

―― 初めてご覧になるお客さんからしたら、それぞれのジャンルの代表みたいな、お客さんに対してはそうなるってことですよね。

いいむろ「そうですね。だからこの業界を背負っている僕らとしては下手なことはできないですよね!(笑)」

NARUMI「できないできない。『ブレイクダンス、しょぼ!』って思われたら……」

いいむろ「ブレイクダンスが全部が『しょぼ!』ってなりますからね(笑)」

NARUMI「多分、いいむろさんを観にきはったお客さんの中には、ブレイクダンスを初めて見はる人もいっぱいいると思うんですよ。そのときに、『あの舞台、別にブレイクダンス要らんよな』とか思われたりとか、『思ったよりかすごくない』とか思われるのがすごくしゃくなんで(笑)。それはみんなあると思います。他のパフォーマーもそう思われたくないっていうのが」

いいむろ「なんならそれぞれ観にきてくれたお客さんを奪うくらいの」

NARUMI「こっちの方がおもしろいよー!!って」

―― いい意味で火花散らしている感じですね。

いいむろ「そうですよ。このインタビュー中も実は(NARUMIちゃんを)つねってます!」

NARUMI「私もね、今、いいむろさんの足踏んでます!(笑)」

―― 『ギア』は大阪発のコンテンツとして、大阪に定着させたいという目的がありますが、それぞれ『ギア』をどういうふうにしていきたいと思われますか?

いいむろ「とにかく今回のロングランを成功させて、大阪に行けば観られるっていうものにしたいし、こないだ長崎に行ってたみたいによそでもできたりとかっていう形で広がっていけばいいなって思います。夢を語ったらたくさんあるんですけど、ホントに語ったたら『ぷぷ』ってなるくらい行ってしまうので…」

NARUMI「夢見がちなんです。大人になれない(笑)」

いいむろ「まずは大阪に行ったら『ギア』を観ようっていう、そういうコンテンツになったらいいなって思います」

NARUMI「ダンスをやっていて、他の国とかに行く機会が多いんですけど、日本は観劇文化がめちゃ少ないと思うんですよ」

いいむろ「そうやな~」

NARUMI「それはお隣の韓国のほうがあるし、アジアっていうより日本が、文化とかアーティストの評価がすごい低いと思うんですよ。例えば、いいむろさんがマイムの世界大会で優勝したとか、知らん人が多い。それはブレイクダンスも一緒で、世界大会で優勝しても誰も知らないと思うんですよ。スポーツはすごい取り上げられる中、こういうアーティストは、言い方は悪いですけどランクが低いと思うんです、社会一般で見たときに。それもあってもっと知ってもらいたいっていうのもあるし、私は小さい子とかのためにもなると思うんです。小さい子がいろんなものを見ることで、いろんな夢を持って生きられるし、そういうもののひとつになりたいっていう気持ちがすごいありますね」

いいむろ「僕も『世界デルフィック・ゲーム』っていうアートのオリンピックみたいな大会で金メダルを取ったんですよ。それを1行だけ取り上げてくれたのが神戸新聞さんだけで……(笑)。日本人で唯一の金メダルだったし、何十カ国から人が集まって、入場行進から何からオリンピック規模でやってるものなんですけど…。僕は帰国したとき、『金メダルとったー!』と思って空港で両手挙げて帰ってみたら…」

NARUMI「凱旋帰国ではなかった(笑)」

いいむろ「あれ?ってなって(笑)。と、いうのもありますし、今も海外の方が文化に対するお金のかけ方が違うってありましたけど、フランスが一番すごいんですよ。その次に韓国。韓国って文化にかけるお金がすごくて、海外に作品を持っていくときの援助とかもほとんど、100%してくれるような感じで。例えば僕らがアビニョンに作品を出したいっていうときは自腹で、それでも何とかどっかから少しずつお金を集めてきたりして何とかして行くっていう感じなんですけど、韓国はひとつのシステムが成り立ってて、要はアートのコンテンツを輸出して、そこからまたフィードバックさせようっていう体制がすごく整っている。そういう意味で言うなら、日本はもっと考えてもらえたらって思いますし、僕らが『ギア』という形でやっていく中でも、なるべくたくさんの方が観てくれて、さらにまあ、一般の方も含めちょっとお金を持ってる方が動いてくれるような(笑)、そういうものになっていけばいいなって思っています」

NARUMI「いいね」

―― そういう意味でも、いい機会ではありますね。

NARUMI「すごい、あれですよ。『ギア』を観たら日常の疲れが癒されると思いますよ。フフフ。日本人、働きすぎやと思うんですよ」

いいむろ「ブレイクダンス観てても思うよ。くるくる回ったりとか、ピョンピョン飛んだりとか、『わ~、これすごいな~』って観てて気持ちいいもんね」

NARUMI「ヨーロッパの人とか、映画を観る感覚で観劇に行かはるんですけど、日本の人とか舞台を観に行くのにも腰が重いと思うんです。興味ある人はいるけど。だからほんま気楽に、ちょっと映画館行こうかって感覚で来てほしいですね」

いいむろ「あと、普通の芝居とちょっと違って、隣の人と『すげ~な!』って言いながら参加できる部分もありますし、お子さんからお年を召した方まで楽しめるものですので!」

NARUMI「みんなで。だからステージとフロアって分かれてるんじゃなくて、すべてひとつになって。ね。ほんまに、私、すごい、面白いと思うんです(笑)」

いいむろ「やっぱりステージとお客さんとの間って、どうしても壁があってという感じになるんですけど、『ギア』はそれがない状態。それこそお客さんがくしゃみしたら、僕らももちろん聞こえるしっていう、いろんなことが通じ合っている中で、僕らもお客さんの気持ちを利用するし、僕らの気持ちも伝わるしっていう。さっき言ったような『全方向』でね」

―― キャストもダブル、トリプルとありますから、出演される方によってまたステージも違うでしょうね。

NARUMI「そうですよ。キャストが変わるとパフォーマンスも変わるし、やっぱり雰囲気とかも変わるから、全然違うと思います」

いいむろ「ブレイクパートも全然違うもんね。NARUMIちゃんのときとkakuちゃんのとき、HIDEくんのときと」

―― ダンスも違うんですか?

NARUMI「違います」

いいむろ「同じマイムでも岡村くんはものすごく背が高くて、僕は小柄でっていう部分でも差があるんですよね。そうなると同じことはできない。彼には彼の売りの部分とか、飄々としたキャラクターとかがあって。もちろん軸は一緒なんですけど、そこの係わり合いとか、お互いの目を見ての感じ方って、演じる中でも変わってくるんです。向かう方向は同じなんですけど、振り幅というか寄り道する幅がまた変わって、それが面白いですね」

NARUMI「ブレイクパートの中では、私一人だけ女性で、あと二人は男性で、いろいろなところが私と違うんですよ。私ができんこと、特に力技系ですね、力技っぽいものはできないけど、逆に私やったら軽くて運べるとか、そういうこともあるし。普段のブレイクダンスでも踊り方が全然違うんですよ」

いいむろ「そうなんですよ。あんまり知られてないですけど。僕も今回で知ったんですけど。全然ね、NARUMIちゃんの動きとか違うもんね」

NARUMI「そう、Kakuちゃんとか、HIDEちゃんはもっとスピンしたり」

いいむろ「筋肉で見せたりね。それぞれ違いが楽しめたり」

NARUMI「全く違う感じになるんで、すごい面白いし、キャストのキャラが違う分、生の感じが出て面白いですね」

いいむろ「僕らの中でも毎回、新鮮な気持ちでやってられるんですよね。それこそ何十回とやっても新鮮な形でできるようにっていうのはありますね。初日が未完成かというとそういう意味ではなく、いい意味で日々、進化しているので。今回も新しい技術が入ったりとかっていうような形とかでね。お客さんも、1回観て終わりじゃなく、何度か来てもらえるとまた違いが見えて面白いと思いますね」

--その日のお客さんの集まり具合によって全体で作り上げる感じも違ってくるんでしょうね。

NARUMI「長崎公演だったんですけど、お客さんの中に子供がいて、その子がむっちゃ声に出して、『わー!すごいおもしろい!!』とかすぐ言わはるんですよ。それだけで会場の雰囲気ががらっと変わって、すごい暖かくなったり」

いいむろ「おじいさんがめっちゃ笑うとか(笑)。ガハハハ!!!って。結構年配の人、すぐ笑ってくれて、すぐ拍手してくれて。それに皆が釣られたりとか」

NARUMI「外国人のお客さんってすぐ『ヒュー!』とかやるから、それでノリがよくなって、反応がめちゃよくなって」

いいむろ「逆にすごくみんなが集中して観てくれる回もありますし。そうなるとすごく繊細な演技も出てくるしっていう、そういう違いがいろいろあって面白いですね」

―― 自分がどんな日に当たるかっていうのも観る側としても面白いですね。

いいむろ「そうですね。もちろん、クオリティの高いものをお見せするということを前提に置いてですけどね!」

取材・文/岩本和子




 

スペシャルインタビュー① スペシャルインタビュー②
プロデューサー小原啓渡 兵頭祐香×佐々木敏道
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スペシャルインタビュー④  
新子景視  
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(2011年3月11日更新)


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プロフィール

いいむろなおき

1991年に単身渡仏し、パリ市マルセル・マルソー国際マイム学院入学。マルセル・マルソーにマイムを師事する。1994年同校卒業後、ニデルメイエ国立音楽院コンテンポラリーダンス科最上級クラスに入学。翌年には審査員全員一致による金賞で首席卒業を果たした。1998年より拠点をフランスから日本に移し、ワークショップやソロ公演などを行う。そして2009年、『第3回世界デルフィックゲーム大会』の即興マイム部門で金メダリスト獲得した。

NARUMI(なるみ)

2度にわたり単身で渡米し、数々のダンスバトルで優勝。インターナショナル・ブレイクダンス・イベント『IBE B-GIRLバトル』で2度優勝。そして『WE B-GIRLZ』でも優勝、2010年には『B-GIRL OF THE YEAR』に輝くなど、名実ともに世界NO.1! 現在はストリートシーン以外での活動も精力的に行い、世界中でプレイヤー・講師・審査員として活動中。シーンの復興活動にも取り組む。パワフルでダイナミックな動きの中にしなやかさも覗かせるダンスで魅了する。

『ノンバーバルパフォーマンス「ギア」』

▼2月10日(木)~3月22日(火)
Creative Center Osaka内、BLACK CHAMBER
前売3000円
当日3500円
大学生2000円高校生以下1000円(要学生証)
[出演] ブレイクダンス(*):kaku/NARUMI/HIDE
マイム:いいむろなおき/岡村渉
バトントワリング(※):佐々木敏道/出口訓子
マジック:新子景視
ヒロイン(*):兵頭祐香/平本茜子/成山あづさ

(※)ダブルキャスト
(*)トリプルキャスト

※この公演は終了しました。